EPISODE OF DENSITY MANIA_PACK-3
KATSUYUKIKODAMAの製品はPARADDIDLE LABという自社工場で生産されている。 日本のファッション市場において全体の97%が海外生産であるのに対して、ブランドとして国内で自社工場を保有しているのは稀有な例だ。 自社工場を持つことには理由がある。 KATSUYUKIKODAMAの縫製は極めて複雑な縫製技術を駆使し生産されている。 その製品の特性上から、他社の工場では生産する事がそもそも不可能だ。 一般的に縫製工場の技術は工場ごとにある程度統一されている。 ならば複数の縫製技術が必要なKATSUYUKIKODAMAの製品を生産する事は事実上不可能。 できたとしても多大なコストがかかり、製品化は困難を極める。 この複数の縫製技術が一つの製品に混在するという、他ブランドとの圧倒的な差別化要素は自社工場が無ければ実現し得なかった。 逆説的に言うと、自社工場が他ブランドとの差別化を可能にしたと言い換えてもいい。
EPISODE OF DENSITY MANIA_PACK-3
力強いストレートなカッティングと流麗な曲線が共存するPACK-3。ボトムにボリューム感を出しつつも、フロントはフラットに、サイドは高密度テープをアクセントに力強いディテールが光る一点。
実は後にリリースされるPACK-4の原型となるボトムラインを持つPACK-3。当時KATSUYUKIKODAのDENSITYMANIA シリーズの中では初めて起用されたフロントに美しい曲線を描くファスナー使いは当モデルで初披露となった。レザーのバックパックに敢えてハズしの要領で使われているNo.10のコイルファスナー(樹脂製の太いファスナー)は曲線に沿い立体的になる事でインパクトを増し立体感を増幅させる。前述したEPISODE of DENSITYMANIA PACK-4ではこの迫力あるディテールを活かしてミニマルに特化させた。一方PACK-3はというと、KATSUYUKIKODAのアイコンアイテムの一つでもあるPACK-2に宿る力強いストレートなカッティングデザインと新たに生み出したカーブラインを掛け合わせたハイブリッドアイテム。
【柔】と【剛】や【直線】と【曲線】といった一見相反する要素を絶妙なバランス感覚で取り入れて新たなアイテムとして昇華していく。バックパックというある程度のサイズ感が決められているキャンバスに異なる要素を織り交ぜていき、細やかな修正を経て他の追随を許さない【美】を再現していく。
その為のベストの模索というのは長い時間と何よりも情熱、アイテムに対する熱量が必須。
デザイナーの兒玉はPACK-1、PACK-2というスマッシュヒットアイテムを生み出した後、飽くなき探究心でPACK-3を生み出す事となるのだが総パーツ数は60パーツをゆうに超え、縫製と仕上げには現存するアイテムの中でもトップクラスの作業工程数。これを正確無比に、より高い精度で実現する工場長の佐古。
文頭で触れたとおり、こういった複雑な仕様や面倒な手順を連打したアイテムというのは一般的な縫製工場では勝手に仕様を簡単にされたり、縫いやすいように勝手に加工されてしまう事が良くある。ユーザーからみると信じられない事だが、こういった事は頻発しがちなのがモノづくりの世界の現実だ。すなわち残念な事だが名ばかりのメイドインジャパンというのは実存する。
そんな中デザイナーの兒玉と工場長の佐古のクリエーションは正真正銘の日本が世界に誇るメイドインジャパン。KATSYUKIKODAMAが生産工場一体型のマニファクチャーブランドである意味を改めて感じさせてくれるのがPACK-3だ。
TAKUYA TODA