ニューヨークで受ける新たな刺激
ニューヨークに降り立ったのは、もう14年も前になる。
14年前はパリでのプレゼンテーションを2回経験したあとのニューヨークだった。超難関と思われたパリだったんだけど、多くの欧米のセレクト・ショップから注文を受け、僕の気分はノリノリでハイテンション。よしっ、次はアメリカ本土だっ!絶対に受け入れられるだろうと簡単な気持ちで乗り込んできたこの地ニューヨークで、易々と蹴散らされるなんて夢にも思っていなかった。
あれから14年の月日が経過して、少しは大人になった僕がニューヨークとどう向き合える んだろう?って、こっちに来る前は結構ソワソワしてたんだけど、そうは言っても一度来てるのもあって、ガイドブックは一切買わず、WEBでの検索も一切やらず。とにかくこの14年のニューヨークに対する苦い感情をポケットにしまいながら、ホテル予約以外の旅の支度は全くしなかった。
14年前はダウンタウンのSOHOに滞在した。そこからハドソン川沿いの展示会場へ向かい、夜はSOHOのスプリング・ストリート沿いにあるフレンチ「Balthazer」で毎日食事した。空振りの展示会の反省会というより、パリではなくニューヨークで食べるステーキ・フリットがなんだか物凄い新鮮で、決して安くもない料理とお酒をバンバン注文してた。今考えると現実逃避の場所が「Balthazer」だったのかも。
今回のホテルはSOHOではなく、グランドセントラルのマレー・ヒル。SOHO界隈の方が僕たちのターゲットとするお店がたくさんあるし、話題のレストランやカフェが多いのはもちろんわかっていた。あと「Balthazer」でまたディナーもしたかったんだけど、前回の苦い思いもあって自然とSOHOは避けた。
ニューヨーク入りして早々、NoSeasonのKENJIくんとグリニッジ・ヴィレッジのセレクト・ショップと商談。あれよあれよと話がし進み早速投入展開が決定、帰国したらそのセレクトショップから受けた別注の制作に取り掛かることになった。幸先の良いスタートを切った後も、マンハッタンのリテーラーを一軒一軒じっくりと回って商談やリサーチ。
それで感じたこと。
それは、先輩たちのブランド~コムデギャルソン、ヨウジヤマモト、アンダーカバー、ソロイストなどは、日本でもよく知られた大手のセレクトショップやデパートだけなく、老舗のブティックやセレクトショップの隅々まできちんと丁寧に展開しているってこと。自分たちのクリエーションを認め展開してくれるショップには、規模の大小関係なく商品がきちんと並んでいる。先輩ブランドたちのまじめで且つ着実に作り上げてきたマーケットを目の当たりにして、城は一夜にして成らずとは分かっていながらも、今回の出張は襟を正すきっかけになった。
独立したときも同じことを思ったけど、先輩たちのステージに早く辿り着きたいって思って、焦って急いで空回りしがちなんだけど、今回ニューヨーク出張で、改めて自分たちの立ち位置とこれからすべき行動が確認できたし、明日からのCREATION JOURNEYの原動力になるだろうって強く感じてる。
今回のマレー・ヒルのホテル、60平米あるジュニア・スウィートの部屋なんで仕事もたくさん出来る。KENJIくんとの商談前のミーティングは僕の部屋のリビングでやったし、次の戦略を練るパワーディナーのあと、貯まったアイデアをリビングのデスクでiPad Proに書き出す。ベッドルームとは別の仕事ができるリビングルームがあるのは本当にありがたい。時差が13時間あって時差ボケが続くのもプライベートな旅行だったら相当ツライけど、時差ボケがあるおかげで、深夜に仕事がスラスラと出来るのって逆に都合がいい。
そしてつぎの1月のパリのプランが固まって来た。この時期に東京にいたらここまで固まることはなかったただろうな。
ニューヨークで新たな刺激を受け、これからがますます楽しみになってきた。
【トップ画像:今回のマレーヒルのホテルから望むイーストリバー / 最下部画像:SOHOのスプリングストリート沿いのフレンチ「Balthazer」からの帰り、毎日歩いた味のあるクロスビーストリート】