原油高と円安と戦争と。

為替相場がヤバいことになってる。

4月19日朝に19年11ヶ月ぶりに127円台に突入したとのニュースが流れて驚いていたら、午後にはあっという間に128円を突破、20日には129円も超え20年ぶりのドル高/円安水準に。この数日は128円台を推移してるけど130円もいよいよ現実化しそうな状況だ。

去年の秋あたりから僕たちの仕入れする金具や生地、テープ、ファスナー等の材料費が高騰して、毎日のように関係各社より価格改定のお知らせ通知がメールや郵送で来ていたんだけど、今年になってからは原油高やウクライナクライシスに加え、急激な円安も重なったトリプルパンチで価格改定の上塗りが続いている。

2年以上続く新型コロナウィルスの収束が見えないなかで、原油、戦争、為替が一緒くたになって僕たちの生活を脅かすようになんて1年前には誰が想像しただろう?特に、僕たちの生きる現代〜21世紀に列強による一方的な侵略戦争が起きるなんてことは誰も予想してなかった。

僕はロシアによるウクライナへの侵略戦争の惨状を日々のニュースで知る中で、ヨーロッパの地政学や歴史についていろいろと調べてみたくなった。そのリサーチの内容を僕なりの解釈を書き留めておこうと思う。これは以下は僕の「調べたことの備忘録」としての文章として読んでいただきたい。

僕たちの住む日本は島国なので、国境の増減の経験がほとんどない。海の向こうのユーラシア大陸は地続きだから積年にわたって脈々と続く領土争いの歴史が存在するんだけど、これを深く理解する人ってそんなに多くないと思う。世界史に疎い人ってまあまあ多いし、僕も学生時代に世界史を専攻していたけど、大学受験レベルの知識しか持ち合わせていない。

それに加え日本って2度の蒙古襲来、黒船来航、太平洋戦争でのアメリカよりの空襲の合計4回しか、外国から自国本土へのプレッシャーを受けたことがないから、領土や国境に対する国民の意識が薄っぺらい。

一方、ヨーロッパをはじめとしたユーラシア大陸では僕が産まれてから現在に至るこの半世紀で、領土や民族同士の問題による紛争がさまざまな地域で起き続けてきた。イラクやアフガニスタン等の中東での紛争は止むことがないし、中央ヨーロッパのユーゴスラビア紛争、シリア内戦、宗教の聖地をめぐるパレスチナ問題など、ユーラシア大陸では戦争してないことはないと言っても過言ではない。国同士が陸続きだから日本人とは比較にならないほど境界線への意識が高い。

ヨーロッパは戦争をしない、領土を犯さないことを前提にして自由な経済圏を形成するEUというグループを作って均衡を保ってきた。同時にNATOという集団的自衛権の軍事同盟も存在して拡大を続けてきたから、孤立化するロシアの苛立ちは近年、沸点を通り越していつ暴発するかわからない状態だった・・・らしい。

冷戦終結後にワルシャワ条約機構が廃止・解散になった1991年から、機構に加盟していたソ連以外の国(ルーマニア、ハンガリー、東ドイツ、ポーランド、チェコ・スロバキア、アルバニア)がことごとく順々にNATOに鞍替えして加盟したことを僕は全く知らなかった。元ソビエト連邦の構成国だったバルト三国(リトアニア、ラトビア、エストニア)も2000年代に入ってからNATOに加盟したなんてことももちろん知らなかったし、いまロシアから侵略を受けている元ソ連の構成国のウクライナもNATO加盟を伺っていたなんことも恥ずかしながら1ミクロンも知らなかった。

着々と進むNATOの勢力拡大のことを知らないんだから、ロシアがどれだけNATOに対して脅威や焦り、苛立ちを感じていたかは当たり前のように僕は知る由もなかった。よくよく考えてみたら、仲間だった国がほぼ全部オセロのようにNATO側に行っちゃうんだから、そりゃロシアの孤独感は半端なかったでしょう。

現在のロシアの立場や状況を理解していない僕は、今年の2月に入った頃、ロシアがどうも怪しくてウクライナとの緊張状態が増大していっても、まさか侵略戦争をするなんてことはないだろうと踏んでいたし、専門家ですらプーチンの本気度には実際気付いていなかったんだから、平和で島国で領土争いに疎い僕たちは何とも幸せ者だ。

一次世界大戦、二次世界大戦のころのヨーロッパ列強の構図やその前の産業革命、はたまたヨーロッパ統一を目指したナポレオンの勃興などを深く調べていくと、ヨーロッパにおいて領土を守るための侵略戦争は昔も今もどの時代でもデフォルトだということに気づく。

二度にわたる世界大戦からの反省で、先進国による侵略戦争なんて絶対にあり得ないし、領土問題は外交で解決できるとみんな信じ切っていたんだけど、今回のロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、実はいつでも起こりうる事態だったんだ。

18世紀後半のフランス革命以降は、国民に主権が移ったことによって戦争が貴族同士が傭兵を雇って戦った領土争いではなく、民族と民族の争い〜国民が兵隊となって戦地へ赴く国民国家の総力戦の戦争に変貌していった。そうなるとよりいっそう自らの民族を誇り、領土を守る意識は過激さを増すことになった。

当時の国家が共通語を制定しそれより以前に存在した私立の学校ではなく、公立の学校を作って義務教育をスタートさせたのは、ナショナリズムを形成する手段のひとつだったなんてことを知ると、驚きを通り越してもっともっと日本や世界の近代史を知りたくなってくる。

国民国家の戦争で最初の大戦の一次世界大戦、これはアメリカが終盤に参戦したことや、日本がヨーロッパ本土には参戦せずヨーロッパの戦火に乗じて極東アジアの中国にあったドイツの租借地に進出したことから考察すると、世界大戦というよりヨーロッパの国同士の戦いとしてスタートした。

国民国家となった国同士の戦争で1,000万人近い兵士が戦死し、2,100万人が戦闘で負傷したと推定されている大戦。もともとはドイツ・オーストリア・イタリアの「三国同盟」とイギリス・フランス・ロシアの「三国協商」の対立が一次世界大戦へと繋がった。

1939年に始まった二次世界大戦もドイツによるポーランド侵攻が発端となってイギリス・フランスがドイツに宣戦布告したことから始まった。子ども、兄弟、親戚など親族内に多くの戦死者を出し1918年に終わった一次世界大戦からわずか21年しか経っていないのに、また戦争がはじまったのだ。しかもこれもまたヨーロッパから始まった。

と考えると、ヨーロッパの国同士の戦争はさっきも書いたけどいつの時代においても本当にデフォルトなんだってことがファクトとして突きつけられる。

1945年に終わった二次世界大戦から今年で77年。この間はヨーロッパをはじめとしたユーラシア大陸では小競り合いや紛争はあったにせよ、大戦と呼ばれる戦争は起きていない。でもその期間はわずか77年間だ。また大きな戦争がいつ起きてもおかしくない。今回のロシアによるウクライナ侵攻はこれまでのヨーロッパの地政学や歴史から考えると大戦前夜のきな臭い香りがぷんぷんしてくる。

 一次世界大戦では先述のようにアメリカの参戦は大戦終盤の1917年。戦争が始まって3年後だ。今回のロシアによるウクライナクライシスはまだ2ヶ月しか経過していない。まだまだ戦争は始まったばかりとみることもできる。歴史の教科書で時系列に時代の流れを学んでいくと、文字を読むだけだから、あっという間に戦争が始まり、あっという間に終わったように錯覚するけど、その戦時に生きていた人々からしたら1日、1週間、1ヶ月、1年は、いま僕たちがウクライナクライシスを見て感じているのと同様に、ものすごく長く感じていたに違いない。

当時は新しいメディアだった新聞がプロパガンダとなってホラを吹きまくっていて国民はそれを本気で信じていたんだけど、現在のニューメディアのSNSもフェイクが横行しファクトとの選別が難しく、利用するメディアは変わったけれど政府によるフェイクの流布は昔も今も何らからわない。歴史は本当に繰り返すものなんだ。

繰り返すけど、一次世界大戦と二次世界大戦はヨーロッパの戦争として始まって、列強が次々と参戦した後、戦禍が世界へ広がったのち世界戦争として終わった。今の状況はまだロシア対ウクライナだけど、ロシアが何らかのかたちでNATO加盟国に危害を加えたら集団的自衛権で世界大戦化するのは間違いない。

さらにロシアの隣国で1300キロにも及ぶ陸の国境のあるフィンランドはまだNATOに加盟していないのでロシアとの緊張関係が増していると言われている。6月にはスウェーデンとともにNATO加盟申請に踏み切るとの観測も出ているほどだ。

そんなヨーロッパの現在の状況から考察すると、NATO対ロシアはかつてのキューバ危機を超える一触触発の超危険状態で、過去の大戦直前と酷似していると僕はどうしても考えてしまう。当時と唯一異なるのは核の存在で、これまでは核による抑止力も効き続けてきたけれども、プーチンは核の利用すらちらつかせていて、もう本当にシャレにならない事態が目の前に迫っていると言わざるを得ない。不穏な動きを繰り返す原油高も円安も、戦争と複雑に絡み合って、もう解くことができない糸玉になっていってる気がして、僕の中で恐ろしさが日に日に増大していってる。

ここは各国の指導者に、戦争を全力で阻止するための外交をしてもらいたいんだけど、NETFLIXで去年配信された映画「ミュンヘン 戦火燃ゆる前に」を観てると、イギリス首相チェンバレンのドイツ総統ヒトラーに対する宥和政策が、今のアメリカのバイデン大統領の弱腰外交と交錯して、なんだか本当に頼りなく感じてしまう。世界の指導者さんたち!!歴史を繰り返しちゃダメだよっ!!いまこそ頑張って!!

今回のブログはあくまでも備忘録で、戦争も進行中なので、もちろん結論なんて書けないけれど、ウクライナクライシスが始まったこの2ヶ月間、ヨーロッパのことを学んだことは、感情的ではなく今起きている事実をニュートラルに直視するのに本当に役立ったと思う。

前回のブログで書いたポッドキャストの「COTEN RADIO〜コテンラジオ」で、ロシア・ウクライナのことや世界大戦のことなどを相当わかりやすく&詳しく解説しているので、みなさん是非聴いてみてくださいね。

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