パラダイムシフトへの対応〜第1回
先週は多くのお客さまと話しをすることができて本当にエキサイティングだった。とりわけお客さまの新作への期待度は半端じゃないなって強烈に感じた。っていうのもトレンドの潮目の変化に、ブランド側もお客さま側もなかなか対応することができていなくて、まだ見えぬ事に対する過度な期待がこの数ヶ月ずっと続いているように感じる。つまり次のトレンドを早く見たい・触れたい・欲しい・買いたいっていう欲望の炎が恐ろしいほど燃え上がってて、なんだかマーケット自体が戦々恐々、戒厳令下のようだ。
そんな中、KATSUYUKIKODAMAもたくさんの新作を発表した。次のトレンドの風が心地よく感じられるアイテムたちの数々にリテーラーのお客さまも満足していただけたんじゃないかな?それらの新作アイテムはすでに一部店舗ではプレ・リリースされているけど、早ければ6月末から通常リリースされるので、カスタマーのみなさまご期待くださいね。
さて、AW2019の新作を今回から数回に渡ってデザイナー自ら解説してみようと思う。
新作は、ユニバーサル・デザインでポストミシン仕立ての「DENSITY MANIA #AIR」、バッグトレンドのパラダイムシフトへ対応した「CREATION JOURNEY」、KATSUYUKIKODAMAのクリエイションで使用された素材をリユースした「DESTINATION」などで構成されている。
「DENSITY MANIA #AIR」は2月のAW2019の1st展示会で発表、すでに阪急メンズ大阪や心斎橋大丸のポップアップイベントでの先行リリースされ、期間販売本数トップに輝くスマッシュヒットになった新シリーズ。日本において一般的な縫製方法のバッグを裏返した状態で縫製して最後にひっくり返して成形するやり方ではなく、逆にバッグを表から縫っていって成形していくポストミシン仕立てによって作られる「DENSITY MANIA #AIR」は、ひっくり返さないがゆえ革の表面に一切シワが出ず、デジタル・デバイスのような無機質で無表情な美しさが特徴のユニバーサル・デザイン・シリーズだ。
内部は表のレザーにピッグレザーがべたばりされているだけの仕様で、形状を保つための芯材やその他の材料を一切使用していないからレザーアイテムなのにびっくりするほど軽量。それなのに美しいカーブを描きながらの立体的なフォルムが作りだされていて一体成型物と見間違えるほどのクオリティだ。
この新シリーズを創るにあたって佐古と僕は毎度のごとく納得するまで幾度にも渡ってプロトタイプを製作し続けたんだけど試行錯誤の連続。そもそもポストミシンの縫製に本格参入するのはいいけど、型紙からしてどうやって作ってをいいか僕たちは全くの無知。それでもなんとかなるだろうと机上の理論で正面突破を試みるんだけど、当たり前ながらまったく良いものが出来上がらない。良いものどころか立体がぜんぜん出来上がってこなくて縫製も汚くなってしまう。もうこればっかりはポストミシン仕立てを諦めるしかないかなと思うこともあった。
そんな中、知り合いの工場がたまたまポストミシンを買ったっていう話をきいたので僕たちはまずはそこへ相談に行った。その工場の社長もこれまでポストミシン仕立てに参入するのは躊躇していたらしいんだけど、そこそこの需要も見込めることから今年になって思い切って工場にポストミシンを導入したようだ。平ミシンと違ってポストミシンによる縫製は日本人は慣れていなくてスピードが出ないから工場としてなかなか採算ベースに乗らない。だからみんなポストミシンの仕事はやりたがらない。でも僕たちは「DENSITY MANIA #AIR」を絶対に2月の秋冬1st展示会で発表して春先にはプロモーションツアーの目玉にしたかったんで、超早期に採算ベースに乗せる方法を考えなければならない。
そんな時にその社長から紹介されたのが荒川区にある老舗の木型屋さんだった。ん?ポストミシンの縫製をするのには木型が必要なのはなんとなく聞いたことがあったんだけど、木型を作る工場がどこにあるのか?どんな工場で木型を作っているのか?わからないことだらけの中、僕たちは早速紹介された荒川区の木型屋さんに向かった。
〜第2回へつづく