潮目が変わったファッション業界 (4/4) 〜中国市場を見る眼の変化

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潮目が変わってきているバッグ・ファッション業界。

ホントにそんなに言うほどダメなのか?

それともやっぱりこの業界はダメなのか?

変化しているのか?

変化に対応できているのか?

それとも変化なんてしなくていいのか?

あれこれにスポットを当てて、3回に渡ってああだこうだ語る最終回の今回は、「中国市場を見る眼の変化」について語ってみよう。

すでに成熟して久しい欧米各国や、成熟してそこそこ日の経つ日本において、ファッションとは身にまとうことで自分自身を変身させるツールとしての地位が多くの国民の中で確立していて、インターナショナルのハイブランドやデザイナーズ・ブランド、キャラクター・ブランドなどの住み分けも既にきちんと整理整頓されている。さらに近年のファストファッションの台頭と席巻もありながらも、かえって雨降って地が固まっちゃって、それこそワンランク上の成熟の域に達したなって感さえある。

欧米各国やそれに続く日本は、世代ごとのブランドとカスタマーとが一緒になって、胎動→誕生→成長→狂乱を繰り返しながら、上昇気流を起こして成熟に至った。でも成熟に達してからは、上昇気流を作り出した経済自体とともに現状を維持、もしくは若干シュリンクしながら、ぬるま湯に浸かった状態が長く続いている。ワンランク上の成熟とは、もうこれ以上伸び代のない停滞しているっていうことだ。

そんななか近年、胎動から誕生と成長を飛び越えて狂乱の時代を迎えた中国が世界中のファッション・マーケットに向かって一気に押し寄せてきた。ファッションの消費に関しては長らく胎動がつづいた中国の国民は、2010年代に入ってからそれまでの燻りを一気に爆発・開花させて世界中でファッション・アイテムを買い漁った(もちろん車や家電、薬品なども買って買って買いまくったんだけど、ここではファッションに関することを書くことにする)。

僕の大学の卒業旅行は中国北京だった。1993年3月のこと。道路は自転車で移動する恐ろしい数の人民で溢れていた。人は多かれど経済はまだ貧困でファッションを楽しむなんて空気は一切なし。当時中国の原宿といわれた王府井は人も建物も閑散としてて原宿というには程遠く、飲食ではマクドナルド、アパレルはベネトンしかなくて本当にびっくりした。2007年に14年ぶりに北京を訪れたときには一気に都市化していたけれども、まだまだ感に包まれてて僕たちが仕事で出張していた青島や烟台は田舎そのもの。偽物市場は数あれど、何をどうしたらいいのかわからない胎動的な時期だった。

おそらくそんな胎動の燻りからなかなか脱皮できず、その後も中国国内市場でファッション業界がそれほど成長しなかったのだろう。2010年代に入ってから、まずは中国の富裕層が海外のファッション・マーケットへ飛び出して行った。当初、中国富裕層の買って買って買いまくるその買いっぷりに欧米や日本のファッション・マーケットはびっくりした反面、かつて日本人がそう見られたのと同じように各国の国民は彼らのことを間違いなく色目&白い目で見ていた。

ところが豊かになってきた中国人が爆発的に増え始め、北京や上海の都心部の富裕層だけでなく、地方の中流層まで海外へ渡航してファッションブランドを買いまくるようになると、彼らの爆買いに恩恵を受けたブランド側やリテーラーは、あっという間にそのインバウンド売上がなくてはならないものになってきた。

そしてそんな数年が過ぎていくと、自国へ中国国民を招き入れる = 待ちのビジネススタイルから今度は、ブランドやリテーラーが中国国内市場への進出を模索するようになった。

もちろん僕たちKATSUYUKIKODAMAも既に中国国内では売られてはいるけど、中国の市場規模を考えると、まだウブ毛程度。国内外のブランディングが成功して、既に日本国内での売上の3倍以上を中国市場で売上げるようになった先輩のブランドもあったりして、ブランド側の眼が中国へ向いてきているのは間違いない。

売り方にしたってそう。パリやミラノで展示会をやってそこで中国のリテーラーがバイイングする以前からのスタイルだけでなく、天猫や京東といったECでのBtoC市場へのアプローチも活発化してるし、さらに唯品会の越境ECの規模も同様に拡大、もう中国市場に対して真剣に取り組まないブランドは淘汰されるんじゃないかってところまできた。

中国の富裕層がこぞってやってきてブランドを買い漁ってくれた当時のブランド側の眼 = 白い眼と、今の中国市場へ進出したいブランド側の眼 = 黒い眼、同じ眼なのに中国に対する見方が白黒で真逆になっている。よくよく考えてみたら、中国や韓国はあれだけ偽物市場が充実しているんだもん。もともとファッションは大好きなんだよね。ちょっと前はまだ胎動だったから何をどうしたらわからなかっただけなんだ。今は水を得た魚と同じ。その人口も相まって、誰もが参入したい巨大モンスター市場になっちゃった。

さてさて、ファッション業界は旧態依然としてて変わっていない&変化をしていないって言って業界を去った人、渋々業界に留まる人。この業界はそれほど旧態依然としてはいないですよ。旧態依然としていないどころか、新規市場へどう参入していくのか、毎日みんな虎視眈々と狙いを定めています。

ファッション自体とその環境の変化を今回3回にわたってで振り返ってみたんだけど、変化すること = 素晴らしいことなのか?って自問自答したりもするようにもなった自分を猛烈に反省しつつ、ブランドを創る身として柔軟に対応できるアタマでいないとなとつくづく感じております。

その先には僕たちの新しくて変化効いたクリエイションを待つ世界中のカスタマーがいるのだから。

2 comments

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