潮目が変わったファッション業界 (2/4) 〜 サラリーマンの背中

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このところスクエアなバックパックを背負うサラリーマンが本当に増えた。新宿や品川、東京など大きなターミナル駅を歩いていると、以前はサラリーマンといえばブリーフバッグを持っているスタイルが主流だったんだけど、今はそんなスタイリングの人は皆無になり、ブリーフバッグを縦にしてそのまま背負うスタイルのサラリーマンでオフィス街が埋め尽くされてるではないか!!!

重要なのは、そのサラリーマンが渋谷や青山、中目黒あたりのファッション関係の仕事ではなく、新橋や銀座、東京・丸の内界隈のちょっとお堅い仕事関係であろうにもかかわらず躊躇せずバックパックを背負ってビジネス街を闊歩しているってこと。

たしかにこの数年、昔サザビーで流行ったブリーフ&ショルダー&リュックの3Wayになるブリーフバッグが、リバイバルで多くのカジュアルブランドからリリースされてよく売れていた。でも今のサラリーマンの身につけているブリーフ型のバックパックは3Wayというより純粋に四角いバックパックだ。背負うかハンドルで持つかだけの2Wayもよく見かける。

クールビズなんかで、ネクタイをしないことも普通にはなってきているとはいえ、バッグを背負うのはあまりにもカジュアルダウンしすぎなんじゃない??バッグを創り出してリリースする側の僕たちから見ても、長らく続いた伝統的なサラリーマンのブリーフバッグスタイルから、これはあまりにも一気&急激な変化。しかもみんな右へならえして両手ぶらりの闊歩スタイルでオフィス街の風景が激変した。この前とある士業の先生までもが、「そろそろ私もバックパックにしようかな・・・」って。その先生は還暦を越え事務所は新橋のド真ん中。おお、この流れははもう誰も止められない。裾根への拡大スピードは超特急ではなく最新鋭の新幹線並だ。

ではなぜ急激にバックパックスタイルは浸透したのか?

スタイルの変化の最大かつ唯一の要因は、現代人に欠かせないインフラとなったiPhoneをはじめとしたスマートフォンの誕生だ。

iPhoneをはじめとしたスマートフォンは、電話はもちろんのこと、Web検索、乗り換え案内、スケジュール管理、そして地図といった、サラリーマンには欠かすことのできない機能が満載だ。さらに移動中は音楽も聴けて、雑誌も読めて、ゲームもできる。記念撮影だけでなく備忘録として気軽に写真も撮れるし、朝と昼と夕方には定期的にニュースが自動で配信されてきて、新聞の号外より簡単に速報を知ることだって難なくできる。iPhoneをはじめとしたスマートフォンは瞬く間にみんな手放すことが不可能なデバイスになった。

逆にいうと、iPhoneをはじめとしたスマートフォンの誕生でなくなったものも多数ある。スケジュール手帳を持ってるサラリーマンは随分減った。僕が大学生のころはシステム手帳(←死語)を持ってカフェでパワーランチをするサラリーマンの姿が憧れだったのに、今そんな人がいたら昭和で80'sすぎてお笑いの的だ。ポケットに入る地図の本も今は誰も持っていない。電車で丁寧に折り曲げながら新聞を読む人もいなくなったし、雑誌や週刊漫画雑誌を読んでる人も皆無。CDウォークマンなんて誰も持っていない。

サラリーマンがそんな重要なデバイスを操作するのに最も適したバッグがバックパックなんだ。バックパックスタイルだと両手がフリー。iPhoneをはじめとしたスマートフォンも大型化していてみんな両手で操作するから、必然的にバッグは背負う物になる。初めての客先へ地図を見ながら行くのにブリーフやトートだと邪魔で仕方ないけど荷物のことは気にしなくていいから、サラリーマンに一番適したバッグは本当にもうバックパック以外ありえなくなった。しかもこれからはそのバックパックもっと軽量化して小型化していくだろう。

「もうファッションはダメでしょ」。そう言いながら早ばやと業界を捨てる人や、歳も歳なんでしぶしぶこの業界で仕事している人たちが必ずいうセリフ。旧態依然としてて変わっていない&変化をしていないのが彼らの言うダメな理由。

ファッショントレンドを海外のコレクションからだけでなく、世の中の流れをきちんと把握して新作で提案していけば、この業界も決して旧態依然としてて変わっていない&変化できない業界でもないんだなと、サラリーマンの背中を見てしみじみと感じた。

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