新作「ENIGMA VARIATIONS」〜中編

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セールス部隊からのリクエストでデザインが始まった新作「ENIGMA VARIATIONS」。素材もすでに決まっていたしトート・バッグのイメージは頭の中でほぼ100%固まっていたから、スケッチからデザイン画になり仕様書作成に至るまでの時間はそんなにかからなかった。

そのイメージとは、「しっかりながらふっくらした素材感を活かしたミニマル・デザインのトートバッグ」。このコンセプトを基にして描き始めたデザイン画は、あっという間に完成。Apple Pencilのマジックにかかったかと勘違いするほどのスピードだった。

デザイン画を描く前からすでに決まっていた素材は、牛革のナチュラル・シュリンク。ベジタブル・ベースの下地を太鼓(ドラム)を回しながらナチュラル・ドライさせて細かいシュルンクを出したソフト革。ベジタブル・ベースがゆえコシがありながらもふっくらした仕上がりで独特のタッチ感がある。さらに空打ちによって若干の焦がしが出てて程よいナチュラル艶が出ている。

でもその牛革だけだとバッグにした場合少し痩せて仕上がる。長時間の空打ちで、革の組織が壊されてかなりソフトな革になってるからKATSUYUKIKODAMA特有のボリューム感が出ない。先述のとおりベジタブルベースなのでもちろんコシは残っているけど、この革だけでバッグにはできないし、KATSUYUKIKODAMAのラインナップには入れない。

で、今回は裏地との間に芯を抱き合わせてバッグ自体の仕上がりを太らせた。素材の素晴らしいタッチ感はそのままで、芯で仕上がりを調整するのはバッグでも洋服でもよくある手法だ。芯は何十種類もあるんだけど、その芯選びはデザイナーの大切な仕事で、芯選びを間違えるといくらパターンが完璧でも当初のイメージやデザイン画とはかけ離れたバッグになる。

今回のナチュラル・シュリンク・カウレザーをトート・バッグにした時にバッチリ合うと思われる芯を、何十種類の中からチョイスしてパートナーの佐古に伝えて完成したトート・バッグはイメージ通りに完璧に仕上がった。

素材選びとその加工によって完成したバッグが一発で当初のイメージ通りに上がってくるのは、デザイナーの真骨頂なんだ。

つづく

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